見てはいけないものを見てしまった。

 

 先日、沖縄行の機内で、見てはいけないものを見てしまった。

大気を切り開いていくジェットエンジンの重くて単調な音、それはついつい眠気を誘う。

ウトウトしてふと目を覚ますと、横並びに座っている若い女性の二人組、ごそごそとバッグからなにかを取り出し、テーブルに並べ始めた。

小さな箱に入ったチューブや万年筆のようなものや筆、そして小さなパレット、中には4色ほどの固形絵具が入っている。

色は薄い青とかベージュ、黒っぽいものだ。

水彩画でも描くのかな、と思ったがどうも水は使わないみたいだ。

すると、棒状のパステルの色棒を出してきて、小箱のふたについている鏡を見ながら、顔のあたりに塗っているようだ。

なにぶん真横にいるのではっきり見えない。

まさか顔を回して改めて見るのは、女性に無関心な私にはできないことだ。

そのあたりの礼儀はわきまえているつもりだ。

ただ右目の端ぎりぎりの視界に、そのような動作が感じられる。

すると、今度は墨汁の入った筒状のものを出した。

ふたを開けた瞬間、気圧の関係か黒い液が飛び出て、白魚のような手に点々と黒い汁が散った。

二人は悲鳴をあげながら、あわてて拭いていた。

筒の先には、煙突掃除道具を小型化したゲジゲジのブラシがついていて、どうもまつげをいじくっているらしい。

おお、今度はバッグから出してきたのはカラオケ用のマイクではないか。

いや、よく見ると先端の丸い部分はやわらかい毛のようだ。

なるほど、これでもって総仕上げをするということか。

 

いつの間にか私は眠りに落ちた。

気が付いたときは、ちょうど機内サービスが回ってきた時だった。

先ほどの情景は、高度1万メートルの成層圏で起きた白昼夢か幻か・・・?

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